釣り
八重芸の夏合宿。1年生の中には、夏合宿ってのは半分かそれ以上が遊びだろうと水着を持ってくる者もときどきおりました。まあ、着ることはできないんですけどね。練習漬けですから。
一方、OBの中にはときどき釣りをする人がいたりします。実は、私もその一人。といいましても、さすがに、みんなが練習したり指導したりしているときに、竿を担いで海へなんてことはできません。発表会が終わって、翌日、みんながまだ寝ている時刻に港へ行ってかねてより準備のモバイルロッドを取り出してかわいい魚を釣って遊んだことがある。という程度です。
八重山出身の部員の話です。子どもの頃、魚釣りは空き缶でやったと言います。いったいどうやるのか。いつか見せてほしいと思っていましたら、OBになってから、西表の堤防でその機会がありました。子どもたちが空き缶で釣りをしていたんです。その方法とは。
まず、空き缶に釣り糸を結んで、ぐるぐると巻き付ける。つまり、空き缶がリールになるんです。糸の先に適当な石(結びやすい形の石)を結んで、さらに仕掛け=つまり、細い糸と針とをつけます。エサはそのあたりを歩いているヤドカリ。気の毒ですが、中身を取り出して針にさします。準備ができたら、糸に結んだ石を振り回すようにして沖に向かって投げる。そのとき、左手は空き缶を持っているんですが、缶から糸がするすると出ていくように、沖に向かって持つんです。ちょうどスピニングリールのようになります。エサが海中に沈んだら、空き缶を堤防の上に立てて待つ。これで、魚がかかれば空き缶が倒れ、「カラン」と音がして知らせてくれるといわけです。おそらく、八重山だけの話ではなくて、全国にこんな釣りがあるのでしょうけれど、この釣りを見たときの私は、子どもたちの知恵に心から感服したのでした。
子どもたちの釣りを見ていましたら、小さな魚がかかってきました。「なんだ、がちまやーだ」と言って、海にポイ。どうやら目当ての魚ではなかったようです。