フクギ
1年生の夏合宿で波照間島に行き、そこで家を囲むフクギを見ました。私には初めての景色ですが、部員の中にはその光景を見て懐かしいと言う人もいました。
フクギは、彼らにとって、日陰を作ってくれる日傘のようなもの。確かに、フクギの陰は涼しいです。おそらく、幹の下の方は枝葉がなくて、ある程度の高さから茂るよう=五平餅みたいな感じでしょうか=になっているので、風がよく通ります。それに、おそらくフクギ自身がアスファルトの道路や屋根瓦のように熱を持たないので、木々の間を通る風の温度を幾分下げてくれているのだろうと思うのです。当時の私の生活の中には、エアコンというものがほとんどなくて、このフクギの作る涼しさはこの上なくありがたいものでした。
「ここを切って、草履にする。という遊びなんだ」といって、枝先の二枚の葉っぱを切り取ったのでした。1枚を草履の本体とし、もう一枚は鼻緒になるのでした。実用的とは言えないけれど、よくできた子どものおもちゃだと思いました。
フクギは、臭い。実が落ちて腐ると、臭いです。それがいやでフクギは減ってしまったという人もいましたが、おそらくそれだけでなく、フクギという植物と一緒に生活するには、それなりにお世話も必要ですし場所もとるわけですし。だったら石垣もフクギも無くしてブロック塀にという考えに至るのもしかたないのかもしれない。でも、ブロック塀じゃあ涼しさも子どもの頃のおもちゃにもならないですよね。