ばんみかせ!
ここまでは、1978年4月から1979年3月までの八重芸の一年間を順番に書いていきました。ここからは、私が思い出したことを、時系列を無視して書いていきます。
今回は「ばんみかせ」
1979年1月の発表会、つまり、私が1年生のときの発表会です。二日目が終わって、体育館の中の片付けも終えてこれから打ち上げ会場へ。
先に歩いて出発した部員もいましたが、私が体育館を出たとき、荷物運搬用に軽貨物に先輩が乗り込んでいて、
「おい、お前も乗っていけ」
と声をかけられました。発表会が終わって、みんなすがすがしい気持ちです。さあ、飲むぞ!食べるぞ!といったところ。
後部座席に一年上の先輩が乗っていて、私に手招きしてくれました。車に駆け寄ると、先輩は席の奥へお尻をずらしてくれて、私が乗り込みます。軽貨物はスライドドアです。ドアに手をかけて力を込めて閉めようとしたとき、先輩が、
「とー、ばんみかせ!」
今の私なら、「はい!」と元気よく返事をしてドアを「スルスル・ドン」。そして、ブーーーン。
ところが、このときの私は「ばんみかせ」の意味が分かりませんでした。
「とー、ばんみかせ!」
「は?バンミカセ?え?」
閉めようとしていた手をドアから放して固まります。
「はーっさ、ばんみかせーってば」
「あ・・・え?」
どうしていいかわからなくて、困っていると、先輩が私の前に乗り出すようにして、ドアを閉めてくれたのでした。